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曇
- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 潮出版社
- 発売日: 1993/02/24
- メディア: 文庫
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彼は、戦時中、学徒動員の折、爆撃を受け九死に一生を得る体験をする。
それが後の「火の鳥」や「ブッダ」を生む一因となったことは、自伝や
講演会のビデオから推察される。
生老病死を深く考えた彼は、人は死ねば、宇宙の根源的なエネルギー
それと同じことを、理論物理(量子力)学者のデヴィット・ボームが
提唱している。まず、おちょこちょいのニューエイジ・サインティストが
飛びつき、日本の坊主にも共鳴する人がいる。
ボームが提唱したのは、「明在系」と「暗在系」という概念。「明在系」
とは、現に我々が知覚する現実。それ以外にも「暗在系」という認識不可能な
世界が存在し、物質も精神も時間も空間も全てエネルギーとして畳み込まれて
いて分離不可能らしい。そこでは、俺も他人も、さらには花も月も太陽も、
エネルギーとして渾然と一つに溶けあっているという。「暗在系」は現在の
科学では、観察不可能というのだから、ずるいよな。
この仮説には批判が多いが、信じれば「色即是空 空即是色」の説明が簡単に
つく。しかし、実証はされていない。量子哲学者と揶揄される所以である。
さらに、「明在系」は「暗在系」に潜伏している状態だという。むつかしい
仏教の哲理をなんと簡単に説明できる概念だろう。
信じる、信じないは別にして、ボームの提唱は興味深い概念ではある。