曇

ブッダ 12 (潮漫画文庫)

ブッダ 12 (潮漫画文庫)

 手塚治虫の「ブッダ」全巻読了。

 彼は、戦時中、学徒動員の折、爆撃を受け九死に一生を得る体験をする。

それが後の「火の鳥」や「ブッダ」を生む一因となったことは、自伝や

講演会のビデオから推察される。

 生老病死を深く考えた彼は、人は死ねば、宇宙の根源的なエネルギー

に同化すると描いている(「火の鳥ブッダ」)。


 それと同じことを、理論物理(量子力)学者のデヴィット・ボームが

提唱している。まず、おちょこちょいのニューエイジ・サインティストが

飛びつき、日本の坊主にも共鳴する人がいる。

 ボームが提唱したのは、「明在系」と「暗在系」という概念。「明在系」

とは、現に我々が知覚する現実。それ以外にも「暗在系」という認識不可能な

世界が存在し、物質も精神も時間も空間も全てエネルギーとして畳み込まれて

いて分離不可能らしい。そこでは、俺も他人も、さらには花も月も太陽も、

エネルギーとして渾然と一つに溶けあっているという。「暗在系」は現在の

科学では、観察不可能というのだから、ずるいよな。


 この仮説には批判が多いが、信じれば「色即是空 空即是色」の説明が簡単に

つく。しかし、実証はされていない。量子哲学者と揶揄される所以である。


 さらに、「明在系」は「暗在系」に潜伏している状態だという。むつかしい

仏教の哲理をなんと簡単に説明できる概念だろう。



 湯川秀樹は、量子力学の世界は曼荼羅に似ていると言った。


 信じる、信じないは別にして、ボームの提唱は興味深い概念ではある。